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エアバス A380
エアバスA380(Airbus A380)は欧州エアバス社によって製造される世界初の総2階建て、ターボファン4発の超大型旅客機である。式典を開催してお披露目をした時点(現地時間2005年1月17日)でボーイング747を抜いて、民間機として史上最大・世界最大の航空機となった。
2005年4月27日、フランスのトゥールーズで初飛行した。15ヶ月間のテストののち、2007年以降に商業運行が開始される予定である。この機の開発が行われているあいだ、この航空機はエアバスA3XX型機として知られていたが、初期の構想から初飛行まで、16年の歳月を要した。
[編集] 開発経緯
エアバスはボーイング社の大型機・ボーイング747に対抗できる輸送力を持つ機体として、1989年からUHCA(ウルトラ・ハイ・キャパシティ・エアクラフト)構想の実現に向けての作業を開始した。ボーイング社はこれに過敏に反応し、1991年に747改良型など3種の計画を発表し、UHCA阻止の動きに出た(詳しくはボーイング747-8の開発の経緯を参照)。この動きに対し、エアバスを構成する(当時)エアロスパシアル、DASA、BAe、CASAの4社はボーイング社と共同で、1993年1月にUHCAとは別にVLCT(ベリー・ラージ・コマーシャル・トランスポート)と呼ぶ大型輸送機構想を発表したが、ライバル同士の意見がかみ合うはずもなく、エアバスは1994年6月、UHCAをA3XX(530席~570席の100型と630席~680席の200型の構想)として計画に着手したことを発表し、VLCTは中止された。
ボーイング社はこれに対抗し、同年に747-500Xと747-600を発表、対決する構えを見せた(747X計画)。 747計画はさまざまに変遷するかなり流動的なものであったが、その間にもボーイング社はエアバスに対する露骨な非難キャンペーンを繰り広げ、A3XXの イメージダウンを図った(その誹謗中傷の内容は、かつて自社が747を発表したときに受けたものと全く同じであった)。しかしエアバスは計画を進めた。
2000年12月19日、エアバスは受注を獲得したことから、A3XXをA380として開発に入ったことを発表した。ボーイング社は翌年に747X計画を延期し、ソニック・クルーザー計画を発表したものの、2003年には早々と計画を凍結し、その開発能力を中型機ボーイング787へと注力していった。しかし、その後ボーイング社は、A380と777やA340-600の間を埋めるという理由で、747-400ER、747-8型(計画名)などの大型機の開発を開始している。
A380の1号機は2005年4月27日に初飛行、世界での展示飛行を行った後、2006年12月12日に 欧州航空安全当局(EASA)および米国連邦航空局(FAA)の形式証明を同時に取得した。この際、FAAが米国機に義務付けている燃料タンク爆発防止装 置の設置がなされていない事を指摘したが、欧州機では設置義務はなく、エアバスも米国機(ボーイング)との構造の違いを主張し、設置の必要はないとしてい る。ただし、米国のエアラインに採用される場合はFAA基準が適応される可能性がある。
[編集] デザイン
A380型機は、ごく一般的なジェット旅客機の特徴である、低翼で後退角を持った主翼、通常形式の尾翼、主翼パイロンに 装着したエンジンなどの特徴を持っている。A380型機は2つのタイプが先に販売される。3クラス制で乗客555人または総エコノミークラスの乗客800 人仕様で、航続距離 14,000 km(8,000 マイル)のA380-800型と、航続距離 10,400 km(5,600 マイル)で150トンの貨物を輸送できる、純貨物機型のA380-800F型機である。
エアバス社はその機体の大きさからラウンジやバーなどを設けることも可能としている。しかし飛行中は乱気流の発生で突然機体が揺れ、乗客が天井や床に叩きつけられることで、最悪の場合、死亡もしくは重傷を負うおそれがあり、乗客が立ち歩くのは好ましくないとされるため、造ったとしてもすぐに廃れるだろうという意見もある。またボーイング747の開発の際もそのような接客設備の採用が検討されたものの、結局採用が見送られた経緯がある。
[編集] コックピット
A380型機はLCD(液晶ディスプレイ)を用いたグラスコックピットを備えている。ただし、従来のグラスコックピットと違う点は、LCDが正方形ではなく縦長になったことと、6面が普通だったものが8面へとLCDが増えたことである。これにより、コックピットに持ち込む書類の数の削減が可能となる。
[編集] エンジン
A380型機は、ロールスロイス製トレント 900型かエンジン・アライアンス(ゼネラル・エレクトリックとプラット・アンド・ホイットニーの合弁企業)製GP7200型 ターボファン・エンジンのどちらかの装備を選択できる。Trent 900型はA380が初飛行した時のエンジン、ロールスロイス社製Trent 900型ははじめ数多く販売されたが、その後エンジン・アライアンス製GP7200型の販売も伸びてきており、Trent 900型の発注と肩を並べるまでになっている。
[編集] 降着装置
A380 型機の特徴は、なんと言ってもその大きさである。その巨体を支えるタイヤは、ノーズギア2本、ボディギア12本(6輪ボギー×2)、ウイン グギア8本(4輪ボギー×2)、総計は実に22本である。なお、ボーイング747のタイヤはノーズギア2本、ボディギア8本、ウイングギア8本の計18 本、ボーイング777ではノーズギア2本、ボディギア12本の計14本である。
[編集] 日本企業の参加
A380では、エアバスの機体では初めて日本企業の参加が15社と2桁となり、下請け生産を行っている。 2002年4月に床下・垂直尾翼の部材担当として東邦テナックス、ジャムコ、住友金属工業、東レの4社が参入、6月に三菱重(前・後部カーゴドア)、富士重(垂直尾翼前縁・翼端、フェアリング)、日本飛行機(水平尾翼端)、10月に新明和工業、横浜ゴム、日機装が、2003年2月に横河電機、カシオ計算機、マキノが、6月にブリヂストン、三菱レイヨンが参加を決定した。特に日本の炭素繊維の技術に目が向けられている。帝人などの炭素繊維はフレームなどの主要な部分に多用されている。
エアバスとしては日本企業に開発の10パーセントを請け負ってほしいと希望していたが、特に重工メーカーが関係を深めていたボーイング社に気兼ねしてこれを受けなかった。しかし、A380の下請けを契機に今後は積極的に参加すると見られている。
[編集] 発注
[編集] 航空会社からの発注
2005年6月18日の時点でAIGのリース部門、国際リースファイナンス株式会社(International Lease Finance Corporation(略称ILFC))を含む16の航空会社がA380型機を発注しており、その数は27機の貨物機を 含む159機にのぼる。ただし、後述の納入スケジュール遅延問題等の影響で発注取り消しなどもあり、発注数の伸びはしばらく停滞している。エアバス社では A380型機の損益分岐点を250機から300機と見込んでいたが、これを420機に引き上げる羽目になった。CEO Noel Forgeard はこの航空機を750機販売するという期待を表明している。A380型機の価格は公表されていないものの、おそらくは3億ドル程度だろうと見込まれてい る。
通常、航空会社は複数もしくは早期購入に対して大きな割引を受けられるものであり(ローンチカスタマーに対するものがその最たるもの)、定価に発注数をかけたものがそのままエアバス社の売り上げになるわけではない。2007年2月現在では日本の航空会社の発注はないが、国内空港、特に羽田空港の拡張状況や発着枠の推移、北海道新幹線に代表されるような他の交通機関の整備、国内外の航空需要の先行き、伊丹空港の多発機乗り入れ禁止等の厳しい環境基準の問題やボーイング787のような高効率次世代双発機の伸長、海外航空会社の動向や自社の財務体質等を慎重に見極めつつ発注の検討がなされるだろう。
なお、2006年11月19日、20日に成田国際空港にテスト(滑走路、誘導路、PBB(パッセンジャー・ボーディング・ブリッジ)が適合するかどうか)とPRの一環として飛来した。
この最終テストに用いられるのはA380 MSN002。(ロールス・ロイス トレント 900型を装備、製造番号2)。 行程はトゥールーズから出発し、4回に分けて10都市を回る。1回目の飛行では、シンガポール(11月14日)、韓国のソウル(11月15日)に寄航。2回目の飛行で香港(11月18日)と成田空港(11月19日)を回る。3回目は中国を中心として、広州(11月22日)、北京および上海(11月23日)に飛行する。最後の4回目の飛行では、南アフリカ共和国のヨハネスブルク(11月26日)に立ち寄り、南極点上空を通過してオーストラリアのシドニー(11月28日)に寄航。その後太平洋を横断しカナダのバンクーバー(11月29日)に飛行したあと北極点上空を通過しトゥールーズに戻る。
「ワールド・ツアー2007」の一環として2007年6月4日に再度、成田空港に飛来する。6日にはシドニーに向け出発する予定。[2]
航空会社 | タイプ | エンジン | ||
---|---|---|---|---|
A380-800 | A380-800F | オプション | ||
エールフランス | 10 | 4 | GP7200 | |
中国南方航空 | 5 | Trent 900 | ||
エミレーツ航空 | 45 | 2 | GP7200 | |
エティハド航空 | 4 | Trent 900 | ||
| ||||
ILFC | 5 | 5 | GP7200 | |
キングフィッシャー航空 | 5 | TBA | ||
大韓航空 | 5 | 3 | GP7200 | |
ルフトハンザ航空 | 15 | 10 | Trent 900 | |
マレーシア航空 | 6 | Trent 900 | ||
カンタス航空 | 20 | 10 | Trent 900 | |
カタール航空 | 2 | 2 | Trent 900 | |
シンガポール航空 | 19 | 15 | Trent 900 | |
タイ国際航空 | 6 | TBA | ||
| ||||
ヴァージン・アトランティック航空 | 6 | 6 | Trent 900 | |
総計: | 157 | 60 |
[編集] プライベートジェット機としての発注
2007年2月16日のウォールストリート・ジャーナルによると中東の国家元首がA380をプライベート機として購入するため仮売買契約を結んだ[2]。 二つのダイニングやゲームルーム、主寝室などを備え、機体に3億ドル、改装費に1億ドル。ミサイル防衛システムも含まれている。エアバス社では「The Flying Palace(空飛ぶ宮殿)」と呼んでいる。
[編集] 引渡し
エアバス社は公式には引渡し日を発表していないが、航空会社に対しては引渡しが当初計画より6か月遅れると通知していた。この時点での予定ではシンガポール航空は2006年の第4四半期~同年末に最初のA380型機を受け取り、カンタス航空は2007年4月、エミレーツ航空は2008年より前にA380型機の引渡しを受けることになっていた。A380型機の最初の路線就航は2006年末のロンドン・ヒースロー空港発シンガポール経由シドニー行シンガポール航空便、続いて同じくシンガポール航空によるシンガポール発香港経由サンフランシスコ行、シンガポールから東京経由ロサンゼルス行、パリ、フランクフルトへの直行便が就航する予定であった。また、カンタス航空はA380型機をロサンゼルス-シドニー便に投入すると公表した。また、この頃にはエアバス社は月に4機のペースで引き渡しを行うと表明していた[3]。
しかし、2006年6月13日、再びエアバス社は引渡しが6~7ヶ月遅れることを発表した。理由は生産上の遅れとしているが、顧客ごとに異なる内装仕様に対応する為、機内の配線設置に手間取っていることが原因とされている。なお、引渡し機数に関しても計画の年25機(2009年から年45機)から2007年は9機、2008年以 降も予定より5~9機縮小するとした。これにより、更に大幅な受領の遅れになることから航空会社の心証を悪くしており、他の機材を含めて今後の受注に大き く影響すると見られている。また、引き渡し延期をめぐっては、エアバス株の急落に加え、エアバス社幹部が発表前に大量の株を売却したインサイダー疑惑も発覚している。
さらに、2006年9月21日には、EADSが三度目となる納入スケジュールの遅れを発表。続く10月3日には最大の発注元であるエミレーツ航空が、「エアバスからA380計画がさらに10カ月遅れ、機体引き渡しは2008年8月になるとの連絡を受けた」という声明を出している。エミレーツ航空は同声明の中で「当社にとって極めて深刻な問題で(契約に関する)すべての選択肢を見直している」としており、本機の先行きはますます不透明になりつつある。
2006年11月7日、貨物型の導入を予定していたフェデックスが、発注をキャンセルしたことを明らかにした。
2007年3月2日、貨物型の導入を予定していたユナイテッド・パーセル・サービス(UPS)は、エアバスが再建計画の一環として旅客機の生産を優先すると発表したことで、引き渡しがさらに遅れることを懸念し、発注をキャンセルした。エアバス社はこの時点で、フェデックスと併せ、80機あった貨物機の受注を全て失った。
これらの遅れと大量キャンセルにより、A380の採算ラインは、当初の250機から480機程度にまで悪化している。
[編集] 現在計画・研究されている派生型
- A380-700 (A380の胴体短縮型)
- A380-800 (A380の基本型で、旅客型については当面この型のみの販売を行う)
- A380-800C(最小タイプ、397席~454席)
- A380-800F(A380の貨物タイプ)
- A380-800R(A380-800の航続距離延長型)
- A380-800S(A380-800の短距離型)
- A380-900(A380の胴体延長型で、3クラス656席)
- A380-900S(A380-900の短距離型)
[編集] 仕様 (A380-800型機)
出典: Airbus official website[4].
諸元
- 乗員: 2名(操縦士)
- 定員: 3クラス 555名、モノクラス 840名
- ペイロード: 66,400 kg (146,387 lb)
- 全長: 73 m (239 ft 6 in)
- 全高: 24.1 m (79 ft 1 in)
- 翼幅: 79.8 m (261 ft 10 in)
- 翼面積: 845 m² (9,100 ft²)
- 空虚重量: kg (lb)
- 運用時重量: 276,800 kg (610,240 lb)
- 最大離陸重量: 560,000 kg (1,235,000 lb)
- 動力: ロールス・ロイス トレント 900型 または エンジン・アライアンス GP 7000型 ターボファンエンジン, 311 kN (69,915 lbf) × 4
- 貨物(-800F型): 38 LD3 (Unit Load Device) コンテナ または 13 パレット
性能
- 最大速度: マッハ 0.89 (約1,090 km/h, 589 kt)
- 巡航速度: マッハ 0.85 (約1,041 km/h, 562 kt)
- 航続距離: 15,000 km (8,000 海里)
- 巡航高度: 13,100 m (43,000 ft)
- 離陸滑走距離
- トレント 970型: 2,990 m
- GP 7270型: 3,030 m
- 着陸滑走距離: 2,100 m
[編集] 参考
[編集] 関連項目
[編集] 外部リンク
- エアバス・ジャパン株式会社
- Airbus A380 Specifications(英語版)
- 航空の現代 - A380とインサイダー取引(2006.6.18)
- 航空の現代 - エアバス立ち往生(2006.6.20)
- 航空の現代 - エアバス大変(2006.7.11)
- A380が型式証明取得作業への最終テストで成田に飛来(Airbus Japan)
BW Bewise Inc.
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